牙-KIBA- 第35話「生贄となる者」

「俺は……、俺はこんな戦いをするためにこの世界に来たんじゃねぇ。ノア、お前だってそうだろう」


ヌデューの放ったスピリットの攻撃から自分を庇ったノアに、「何故俺を助けたんだ」「俺を処罰しに来たんじゃなかったのか」とまた戸惑うゼッド。普通にゼッドを庇ってましたね、ノア。素が出たというか。やっぱりゼッドの前では意識的に気を張っている、強気でいるということなんでしょうね。


ウルバークスに一旦帰り、秘密アイテム・エクスマキーナ(?)を借り受けたいとヴェンダー博士に懇願するヘリック。彼の解説によると「複数のスピリットシャードを人工的に融合した複合体。スピリットを超えたスピリット」だそうで。ギンガや博士に反対されるも、人気のない時に忍び込んで持ち出してしまうヘリック。おいおい、警報装置ぐらいないのか、あの研究所は。
ギンガはネオトピア人ではないことが判明し、どういった事情でウルバークスにいるのかが気になるところです。ギンガのストーリー上の役割が何なのかがまだ分かりませんが、ゼッドに何かしらの影響を与えることになりそうな感じはします。メインの役割は置いておいて、ロイアに粉かける(言い方が古いか)設定が付随しているのは、普通ならばゼッドとロイアの関係にちょっとした変化を与えるためだったりするのでしょうが、どうもゼッドが嫉妬するようにも思えない……(個人的にはちょっとは気にしてくれると嬉しいですが)。単にゼッド達に絡めやすくするためなのかな。


「余がここで敗れれば、今まで流してきたたくさんの血が、理想を実現するために犠牲にしてきた多くの命が無駄になる」 これが本心ならば絶対規律の是非はともかく、統治者の心意気として素晴らしいことだと思いますが、それは建前で結局は我が身が可愛いだけのように見えます。緊急システムも城の周りしか囲まないところがステキですこと。


ネオトピアから同盟国として援軍の要請を受けたテンプラー。援軍を出すか出さないかで揉めていることに対して、「これがこの国の博愛と調和の正体か、嘆かわしい」とジーコ。前回、国の命も人の命も同じだと言っていましたが、ゼッドがレベッカ(とカルブ・フー)を助けに行こうとしていた時にテンプラーに火の粉がかかるかもしれないから駄目だと止めたのはどなたでしたっけ。ゼッドを助けようとしてくれているのはいいんですが、どうも納得いかないような……。
上の人間と話しても埒が明かないと今度はロベスに相談を持ち掛けるロイア。「じゃあ、ネオトピアに行きますか」と珍しくロベスが役に立つと思いきや、酔っ払って寝込んでしまいました。本当にこの人は……。いや、緊迫な雰囲気が緩和されて良いと思いますよ。これからも和みキャラ(?)として頑張ってください。


「女子どもも区別する必要はない。全て殺すのだ」と制圧した地域に残ったネオトピア人の皆殺しを命じるヒュー。隠れていたサギリも獣人に見付かってしまい、あわやのところでサギリを助けたのはノアでもゼッドでもなく、その場にいた獣人の一人でした。獣人も好戦的で野蛮なばかりではなく、中には情を持つ者もいるんですね。あの獣人はたれ目で締まらない顔立ちのところが、愛嬌があって良いかもしれません。助けてくれたことにお礼を述べるサギリに、安全な場所まで送ると申し出る獣人。良い人だな。でも、こういうキャラクターはたぶん生き残れない。サギリと別れた後、事情を知らずに遭遇したゼッドかノアに切られそうな気がしてなりません。


ゼッドが助けた母子は、今逃がしても結局他の兵にやられるだけなのでは?と思ったら案の定……。それを画面に映して、きっちりゼッドにも目撃させているあたりが牙らしい。ここはゼッドの意識の変化を起こす意味で必要になってくる部分なのかなと。願い叶って閉ざされたカームから抜け出して(ある意味逃げ出して)シャード世界へ来たことの意味を、ゼッドが本気で考えなければならない時が来たのだろうと思います。放送が折り返し地点を過ぎてなお終着点が見えないのは、主役であるゼッドの目的がまだ定まっていないからなんでしょう。
シリアスなシーンなのに、ジーモット兵を倒した途端風が吹いてきたのはちょっと笑えました。
サブタイトルが「生贄となる者」だったのに特にそれらしきキャラクターはいなかったぞ?と首を捻りかけましたが、戦争で犠牲になるのは名もなき一般市民だということなんでしょうね。


次回予告。
サブタイだけで内容が一発で分かる親切設計。アミルが復活するということは、ゼッドの精神的な成長(心境の変化)も描かれると考えていいんですよね? まさか、アミル側の都合で引き篭もってまた勝手に出てきたなんてことはやらないとは思いますが……。


何故だか最近の提供バックはゼッドが多くて、そんな些細なことでも嬉しくなっている私。今日のOP後の二人の背中合わせのカットもちょっとニヤニヤしてました(笑)。