牙-KIBA- 第51話「風吹く場所へ」

「行こうぜ、アミル・ガウル」


ゼッドを取り込み、完全体となるタスカー。タスカーの意志によりスピリットは暴走を始める。タスカーの目的は、人間世界を破壊しスピリットの世界を創造することだ、と。
「お前こそがタスカーだ」
精神世界の中で、タスカーに乗り移られてしまうゼッド。
タスカーの完全体、見た目はサチュラに似ているような。タスカーに乗り移られると、誰もがあの形相になってしまうのですね……。さすがにミレッドは骨格までは変形してませんでしたが。ゼッドとタスカーのバックでは、力に固執することによって滅びていった懐かしい面々が映し出されていました。


暴走するスピリットの攻撃からロイアを庇いジーコは絶命。完成形のエクスマキーナを携えて応戦に駆け付けるギンガ。
ギンガ!! ウルバークスが映った時点でまさか!?とは思いましたが。つくづく死んだと見せかけて実は生きているパターンが好きだなあ、まさか最終回でまでやるとは……。いや、生きていたこと良かったと思うんですけれども。エクスマキーナは人工スピリットだから、タスカーの影響を受けないということなんですね。


「タスカー! 僕は殺されても構わない! だから、ゼッドを返してくれ!!」
ノアを握り潰そうとするタスカー。ノアの必死に訴える声にタスカーに乗り移られたゼッドは苦しむ。
ゼッドがノアをタスカーから救ったように、今度はノアがとは素直に行かないのが牙。ところで、ノアは早い段階でゴーグルを外していましたが、やっとドルガー姿のノアに慣れて来たのにまた誰か分からなく……。
「力を求めれば悲しみしか残らないだと!? じじい、よく言うぜ。力を追い求めて勝手におふくろをこの世界に連れて来て、駄目にしちまったのはてめえじゃねえか!!」
よく言った!ゼッド。もっと激しく非難してもいいぐらいだと思いますよ。ジーコは最期までジーコでしたが……。もう何も言うまい。しかし、ゼッドを最終的に正気に戻らせる役目は、ノアなりロイアなりサラであってほしかったなあと。最終回の中で不満な点を挙げるとすれば、特にそこかなあ。


「アミル・ガウル! 俺に力を貸してくれ!!」
正気を取り戻したゼッドの叫びに応え、タスカーから分離するゼッドとアミル・ガウル。
ゼッドとアミルの連携でのバトル! 最終回では観れたらいいなと思っていたので嬉しい。あれほど巨大なタスカーにも向かっていくゼッドは、相変わらず度胸が据わっています。だからこそ、タスカーに認められる存在になり得たんでしょうけれど。ここで流れていたBGMは初めて聴いたような気がします。と思いましたが、アミルパワーアップのところで流れていたかも。


「アミル・ガウル。俺は最後にお前と戦いたい。俺が求めていた強さは何だったのか、この先どう生きていけばいいのか、それがはっきり分かる気がするんだ」
アミル・ガウルへ向かって剣を振りかざすゼッドに、微笑むアミル・ガウル。
タスカーを倒したと思ったら、いきなり何を言い出すんだ、この子は!?とびっくり。最終回のほとんどを殴り合いに費やした作品を思い出してしまったじゃないですか。ゼッドなりの力に対する決着のつけ方、なのかなあ。ずっと無表情だったアミルが初めて微笑んだことにも驚き。ゼッドの瞳に映るアミル・ガウル、アミル・ガウルの瞳に映る星空が綺麗でした。


「ミッキーも仲間を誘ってくるといい。きっと元気も出るさ。しかし、残念だよ。デュマスに代わる最大のライバルが現れたと思ったのにねえ」
ロベス邸にピーノと一緒にパンを配達するミッキー。
作中で最後にミッキーがゼッドと一緒にいたシーンはネオトピアの戦争が終わって戻って来た時……いや、パン屋に来たのはロイアだけだったので、全領域ジャウストが終わった後でしょうか。ミッキーは立ち位置からしてしょうがないんですけど、ほとんど何の状況も知らないままゼッドと別れる形になってしまったんですね……。あ、いい加減ピーノに差し歯をプレゼントしてあげたら良いと思いますよ。ロベスは誰だっけかねえといつものようにとぼけつつも、ちゃんとミッキーの名前を呼んでいました。彼はゼッドをライバルになり得る存在だと思ってたんですね。

ジーコの遺志を受け継いていくことを決定した審議会。その言葉は本心から言っているのでしょうか? 都合の良いところは相変わらず……。
赤ん坊をあやすカルブ・フーのグスマとルシア。あのレベッカと名付けられた赤ん坊はレベッカ似でした。
ネオトピアの地で救護活動を行うキーラ。
復興作業中のウルバークス。ギンガだけでなくモレノも生きていました。
軍隊を整備するジーモット。ジーモット変わらないなあ。エルメイダはついに最後まで生き延びました。
念願の星空を眺めるミレッドと寄り添うギトラ。
シーカーズでハーモニカを奏でるサギリ。あの哀しげな表情を見る限り、ノアとは再会できてはいない? 生きていることも知らないままなのかなあ。


「ゼッドはここからよくこの景色を眺めていたわ。逆さまになると、別の場所に見えるんだって」
風車がある高台に立つロイアと車椅子のノア。風に乗って何処までも自由に飛んでいくノアの放った飛行機。
「生きていれば、いつか逢えるわ。きっと何処かで逢えるわよね、ゼッド――」
車椅子のノア……。タスカーの器にもされていたし、今までの負担で元々は弱かった体がもたなくなってしまったんでしょうね。表情が穏やかだったのが救いかなと。一言も喋らなかった点が非常に気になりますが、どちらにも受け取ることが出来るので都合の良い方で取っておこうと思います。ゼッドに逢いたいと涙ぐむロイアを見ると、せめてゼッドが行ってしまう前にロイアやノアと一言でも言葉を交わすことができていれば良かったのにな……と。


高層ビルの立ち並ぶ街並み。ビルの屋上に腰掛けるゼッドの元へ着地する紙飛行機。
「行こうぜ、アミル・ガウル」
空へ向かって飛び立つゼッド。ビルに残された羽飾りと紙飛行機。
まさかこのまま主人公生死不明ENDなのか!?勘弁してくれ!と焦ったので、ゼッドが映ってほっとすると同時に、お前こんなとこで何やってんだよ!皆お前がいなくて悲しんでんだぞ!バカーっとも思ってしまいました。ゼッドのいる場所は現代の日本に近い感じで、今までの世界とは全く別のところにいるようでした。ゼッドはアミルと同化したようですね。ということは、もうキースピリットが全て集まることはないから、タスカーが復活することもない? ゼッドが屋上で立ち上がって街並みが見える時の構図が好きです。
残された羽飾りと紙飛行機はどう解釈すべきか悩みましたが(最初にぱっと思い付いた理由は認めたくなかったので)、羽飾りも飛行機も自由の象徴。風の吹かないカームでずっと自由に焦がれていたゼッドが、この旅を経て本当の自由と、翼と、風を手にすることができたのだと。そして、あの紙飛行機はノアの飛ばしたもので、ゼッドの新しい旅に区切りが付いたら、ロイアとノアにテンプラーの皆に逢いに行くのだと、そう信じて――。


キャストクレジットでは、やっとドルガーがノアに戻っていました。ソニーのオンラインショップではロイアのキャラソンが挿入歌に使われるようなことが書いてあったんですが、なかったですね。EDは「世界の果てまで」のフルバージョンでした。とても雰囲気が合っていて良かったと思います。


リアルタイムでこそ何とか泣かなかったんですが、ビデオを観返しているうちに泣けてきてしまいました。3話続けて泣かせるなんて何て罪作りな作品なんだ。観る度に止まったはずの涙が溢れてくるというか、思い出すだけでじわじわときて、今もぐずりながらキーボード打っています。いや、自分でもこんなに泣くなんてアホすぎるとは思っているんですが、ただもうラストが切なくて切なくて。理屈では今までの流れやゼッドの探していたものからすれば、ゼッドがそのままテンプラーで暮らすというのは考えづらいだろうと分かっても、やっぱり皆と一緒に笑い合ってほしかった……! 絶対、皆に逢いに行ってあげてよ、ゼッドーっ!


100%納得できているわけではありませんが、でも私にとってはずっと観続けてきて良かったと思うことが出来る最終回でした。ゼッドは自分が好きになったキャラクターの中で、一番カッコ良かったですよ(中身が)。楽しい作品をありがとうございました。