牙-KIBA- 第47話「迷える救世主」

「この世界に来て、俺はただ漠然と強さだけを求めていた。全ての争いを終わらせた時、俺は本当の意味で強くなれるような気がする。きっとそこに俺の望む力ってヤツがあるはずだ」



ドルガーがサチュラを召還した事により、その正体がノアであると気付き説得しようとするもジームの攻撃で気絶、アミル・ガウルとモナディを奪われてしまったゼッド。
アミル・シャディンVSサチュラ・プロニモ・モナディと、ミレッドのキースピを除いた5体が揃いましたが、シャディンだけ恰幅が良すぎて場違いっぽいのが笑えます。キースピ同士のわりには、普通のスピリットの戦闘とたいして変わらないように感じるのは、城内だから破壊しないよう抑えているんだということにしておきましょう。
前回「全てのキースピリットを手に入れるのは俺だ」とあんなに格好良く啖呵を切っていたゼッドですが、えらくあっさりと……。おマヌケすぎて、アホかお前は! わざわざプレゼントしに行ったようなものじゃないかとちょっと突っ込みたくなります。そして、気絶ときたら次はもう投獄→脱獄という自然な流れなわけですよ。今回の脱獄を補助してくれたのはモーリマでした。モーリマは心酔しているタスカーを復活させてくれるのなら、誰でも構わないといった感じですね。でも、それがミレッドだと癪に思っているようなのは、タスカーを男性として見ていて他の女が近づくのは嫌だという心理?


「ネオトピアが崩壊し、私は絶対規律という支えを失った。それは全てを失うことと等しかった。だが、唯一私に残されたのは、それはカームにいた頃と変わらない自分という存在だけだった。愚かなまでに弱く脆い存在の私だった。私は揺るぎない力が欲しい。決して失うことのない絶対的な強さが」
牢を抜け出したゼッドはドルガー卿ことノアの元へ。タスク側にいることの理由を問い質すゼッドに、絶対的な強さを得るためにタスクをも利用してキースピリットを集めるのだ、と。
「キースピリットを手にするためなら、どんなことも厭わない。君を殺すことだってね」とゼッドに対する執着もすっかりなくなってしまった様子。あんなに必死にノアのことを心配しているサギリを気にかける気持ちもないようです。最初はあまりに無反応なので記憶喪失かとも思ったんですが、今の彼は力以外への興味をなくしてしまっているんですね。救世主として期待されながら何も出来なかった無力な自分に絶望した後、今度こそ皆を救うために力が欲しいということではなく、あくまで自分の存在を確固たるものにするための力か……。ノアにはゼッドや規律がどうということではなく、自分自身でしっかり立ち上がってくれることを望んでいたんですが、今の様子だとその可能性は低そうですね(そういう立ち位置のキャラクターではないのかもしれないという感触はありましたが)。実はまだ何か裏があったりは……しないかなあ。
もう少しノアの心理描写をしてくれないと理解しづらいんだよなあと度々思っていたんですが、スタッフはノアがこういう方向に行きついてしまうと分かっているから、視聴者があまり感情移入しないようにという配慮であえて省いていたのか?(もしくは感情移入させる必要はないからと適当に扱っていたのか)と変な勘繰りまでしてしまいます。消息不明だったノアが力のみに固執する形で再登場するのは普通に予測し得る範囲内なんですが、そこに至るまでの心情変化がやっぱり納得しがたい。全く分からないわけではないけれど、どうにもすとんと落ちてこなくて。ノアに関しては、以前からずっと自分の中でもやもやと引っ掛かったままで歯がゆい部分です。
しかし、何故ゆえノアはドルガーなどと偽名を名乗り、言葉遣いまで違うんでしょうか。キースピ持ちであることをタスク側に隠しているのなら、自分がサチュラの持ち主であるノアだとばれないよう偽名変装というのも分かるんですが。まあ、視聴者を驚かせるための仕掛けに、ストーリー上の理由を求めるべきではないのかもしれません。そんなノアをタスクに連れてきた久々の出番のエルメイダは、熱心にお仕事してました。


「ゼッドは今、己の力で己の進むべき道を進んでいる。自分の力で背負っている運命と正面から向き合っておるのじゃ」
テンプラーの病院で仕事に勤しむロイアは、様子を見に来たジーコに自分もゼッドのところに行きたいと言いかけたところで、今は見守るしかないと諭されてしまいました。ここで見張り兵を倒してシフティングということはさすがにないでしょうね。全てが終わって戻ってきたゼッドを出迎える形なんでしょうか。
諸悪の根源であるところのジーコは、もうゼッドに全てを委ねて自分は傍観者で終わるつもりなんでしょうか。そうだとしたらずるいなあ。せめてサラを捜しに行くぐらいはすべきなのでは。


「もう戦いはうんざりだからな。見たくねえんだよ、死んだり傷付いたりしてくやつらを。だから、俺が全てのキースピリットを集めて戦いを終わらせる」 「思いやりとかそんなんじゃねえんだ。ただ単に許せねえんだよ」
ミレッドの救世主という運命を受け入れられるのかという問いに、そうきっぱりと答えるゼッド。アミルとサギリから託されたシャディンを逆に奪われてしまったおマヌケさんですけどね。
「息苦しい街を抜け出し、自由な風を感じたかった。――ただ、それだけだった」
ゼッドもミレッドも閉じ込められた場所から抜け出したかったのは同じなんですね。気持ちが分かるからこそ「お前が背負いきれない運命は、俺が背負ってやる!」なんだろうなあ。


「ドルガー様、貴方は何者なのですか。貴方は私を助けてくれました。そして、私に色んな物を教えてくれました。初めて知る想いも――」
ドルガーへの想いを募らせていたミレッドは、ギトラとゼッドに黙ってトステの洞窟へ。ミレッドはやっぱり出る作品間違えてる気がしてなりませんが、ドルガーにスピリットを渡せと言われて助けてくれたのは狙っていたからだったんだ、と気付いたあたりはおっとりして世間知らずだけれども単なるお馬鹿ではないんだなと。
ゼッドとギトラが駆けつけ、エルメイダから報告を受けたジームも現れ、ついに全てが揃ったキースピリット。ミレッドのデュナミスも覚醒し、全てのスピリットはミレッドのシャードマークの中へ。そして、黒い光りを放ち、出現した新たなスピリット。
あの場に救世主候補は3人いたのに、ミレッドが器として選定された理由は何かあるんでしょうか。キースピを抱いて生まれてきたという時点で救世主の中でも特別な存在? ほんのちょっとしか出番のなかったデュナミスは千手観音のようなデザイン。果たしてあの新しいスピリットは本当にタスカーなのか、それとも……?


EDクレジットはまだドルガーのままでしたね。次からはノアに戻るんでしょうか。そういえば、ゼッドとお揃いの羽飾りはもう外してしまったのかなあ。


次回「降臨」
タスカー(仮)がいきなり暴走してどうこうという感じではないようですが、ミレッドは精神を侵されてしまうようです。ミレッドの出生の秘密は明かされるんでしょうか。そして、ゼッドママンの出番は? というわけで、残り4話ですよ。どうしよう。