牙オフィシャルファンブック 感想その10

監督・神志那弘志インタビュー その7

監督のライナーノーツ

初期の世界観等の手書きメモが掲載されています。

ゼッドは見慣れた景色を逆さまに眺めるのが趣味(いつもの場所が違って見えて違う世界に飛んだ気分になる)

初期からこの設定はあったんですね。DVDブックレットの監督メッセージでもそのことについて触れられていてへえ〜ちゃんと意味があったんだと感心したんですが、後々本編でゼッド自身の口から語ってくれることになるのなら、先に意味を知ってしまわない方がより楽しめたのかも。
ゼッドはもう逆さまにならなくても、いくらでも新しい世界に行けるんだなと思うと何だかしんみりしてしまいます。ちなみにノアは逆さま景色の意味を知っていたんでしょうか。ロイアだけに話したのだとしたら、ほほぅという感じ。いや、ゼッドにとってどちらの存在が上とか下とかそういうことを言いたい訳ではないですよ、念のため。

シャードクリスタルに触れてはいないが、自分でも抑えようのないパワーを感じる。そのパワーを使ってないとイライラする(扉や門を壊す衝動に出る)

そうか! あの破壊行動はシャードの影響もあったんですね。略年表にも「シャードエンブレムの影響により素行が荒れる」とありますし。どういう理由であれ破壊行為自体は褒められることではないんですが、それが本編でもちゃんと描写されていれば、「扉を壊せばどこかに行ける気がしてるんだ」というセリフだけよりはだいぶん納得いったのになあ。ゼッドの行動の中で街破壊とデュマスにいきなり剣で切りかかったこと(やるなら素手で行けよ)とノーマン邸丸焼き(使用人とかの一般人いたんじゃないのか)は、ちょっと引っ掛かっている部分だったりします。


シリーズ構成・井上敏樹インタビュー


井上さんが牙に対して語られるのは、たぶんこれが初めてですよね。

こういう冒険ファンタジーはへたすると毒にも薬にもならない話になりがちなんだよ。それを回避するためにはね、こういうちょっと…悪キャラっぽい奴を主役に据えて置いた方が、うまく変化球になるだろうと。

監督も「「イイ子」ではなく孤高のヒーローを」とおっしゃっていたし、その点は一致しているんですね。イイ子じゃない主人公にしたい理由はそれぞれ別にあるようですが。
ホントにイイ子なら今自分がいる環境に閉塞感を感じることもないでしょうから、ゼッドのように自ら飛び込んで行くことはなくて、ノアのように召喚でもされないと異世界に行く展開にはならないのかもしれませんね。
異世界だけの話になるのが、ちょっとイヤだったんだよね」というのは、視聴者とゼッドが感覚を共有しづらいからということもあるんでしょうか。視聴者にとっては、結局カームも異世界ですし。カームを舞台に何話かやったあとに飛ぶなら多少違うのかもしれませんけど。

彼(ノア)は意外としぶといからね。俺の呪いにもめげずに生き延びているかもしれないね(笑)。

この直前の発言が結構ヒドイ(笑)。まあでも文字にしてしまうと、どういう調子でおっしゃっていたのかも分かりませんしね。

サラはね、本当はもっと最悪の母親にしたかったんだよね、俺としては。改心もせずにね。

あれでもまだ抑えていた方だとは……。それじゃなくても母子絡みは観ていて辛かったのに、あれ以上やられたら耐えられそうにありません。しかし、サラがゼッドを大切にしていたことを思い出して良かったと思う反面、自分だけ最期に救われて逝くのはズルイという複雑な心境にもなったり。
肉親が敵となって出てきても普通なら過去の暖かい家族としての思い出が根幹にあるものなのに、ゼッドには全くそれがなくて。再会してやっとまともに話ができると喜んでいたのに、結局親子らしい会話も新たな親子関係を築くこともできず、最期にすら間に合わない……。アミルを渡してしまったゼッドの自業自得ということ? この辺りはスタッフにどういう意図があったのか未だに分からないんですよね。当時はもしや次の50話を盛り上げるための演出だったのか?と思ったりもしましたが。

考えてみると、そんなに大物はいないんだよな、『牙』って。ゼッド以外は。ゼッドは大物だった。

私が初めてゼッドに大物の片鱗を感じたのは、欲望も希望なんだと言っていたところですね(笑)。

スピリット同士の戦いに迫力のない回が多かった。(中略)スピリットも戦うし、本人同士も戦うから面倒なんだけどね。

やっぱりそこは皆感じるところなんですねえ。動きがどうこうよりも戦い方がつまらないというか。一応カードを売るための作品なんだし、ただ戦うんじゃなくて戦術というか駆け引きというかもっとそういう要素が入っているともっとバトルも面白く観られたかなあと。



続く。