牙-KIBA- 第49話「母と子」

「なんて暖かい光……。思い出した……、あの時、あの苦しみを癒してくれたのは。私を絶望から救い出してくれたのは。――守りたかった、強くなりたかった。どうして忘れていたんだろう……、私の大切なゼッド」



ゼッドがサラの最期に間に合わないだなんて、そんな…………。自分を見てもらえなくともずっと健気に母親を想っていたゼッドに、死に水ぐらい取らせてあげたっていいじゃないですか。最期の言葉も伝言なんかじゃなくてサラの口から直接ゼッドに、いや言葉なんかなくたっていい、ほんの少し一瞬でいいから直に母親の愛情を感じさせてあげてほしかった……。
いつまでヘコんでいてもしょうがないので、いい加減感想でも。なるべく冷静に書けるよう努めます。


隠れ家に戻ったドルガー。そこで待っていたダイアナは、ノアを救世主として召還した責任として彼の行く末を見届けたいと。
ダイアナはドルガーがノアだと迷うことなく分かっているところがスゴイ。女の勘? しかし、姿を変えて偽名まで名乗って別人になろうとしているのに「あなたの本質は何も変わっていない」は怒ると思います。
「今、天には大きな星が二つ輝いている。あなたの星ともう一つの星。どちらが救世主になるのか、もはや私には分からない」
星が二つと言われて激怒するドルガー。そんなに一番になりたいのか……。一番というよりゼッドを越えたいと思っている彼にとっては、もう一つの星の存在がゼッドであることが腹立たしい? ダイアナが今更引っ張り出されたのは、ノアとの会話の相手のためなのかな。救世主云々のという話をするには一番適任ですし。


タスク城。生きていたデュケムに、キースピリットに選ばれた存在には敵うわけがないと小馬鹿にするモーリマ。
「あの二人は、いずれ戦う運命」
あれで生きてるなんて頑丈だなあ、デュケム。モーリマが寝転がってうっとりしていた場所は、ガリ城でロイアが生贄にされそうになっていたのと同じ所でしょうか。このモーリマの様子を見ると、ミレッドを快く思っていなかったのは、やっぱりタスカー様に他の女が近づくのが嫌だったのかなと。残り2話でモーリマはストーリーにどう絡んでくるんでしょう。


タスクで確認された巨大エネルギーの正体を探りに来たジーコとゼッドの安否を心配したロイアがタスクの浮遊大陸に到着。サラに襲われるロイアの悲鳴を聞き、ゼッドが駆け付け三人は合流。
ジーコは「サラをああしてしまったこの責任はワシにある」というようなことを何度も言いつつ、結局何も責任が取れていないところにちょっとイライラしてしまいます。


サラがもう一度アミル・ガウルを手にすれば命を失うだろうことをゼッドに伝えるロイア。そこに再び現れたサラの姿が。どこかへと歩き出すサラについて行くゼッド。
「おふくろが俺に料理を作るなんて……。やり直せるのか? おふくろと」
今さっきロイアが襲われたばかりなんだから少しは疑えよとも思いますが、ゼッドにとっては初めて母親からかけられた優しい言葉なんですよね。ノアの家によくごちそうになりに行っていたようなので、手料理を振舞ってくれるノアのお母さんの姿を見て羨ましい気持ちになることは多々あったでしょうし、ずっとそんな情景に憧れていたんだろうなあ……。やり直せるのかもしれないと戸惑いながらも嬉しそうな表情や仕草のゼッド。すぐに期待は粉々に砕かれてしまうのだと明らかなだけに余計に切ない。
「今、出来るわ。これが出来れば私のもの。アミル・ガウルは私のもの」
毒入りスープ……。色があからさまに怪しすぎます。ギャグなのか? わざわざ期待を抱かせておいてから思いっきり突き落とすという、主役だろうが容赦ない仕打ち。そりゃあ泣きたくもなるよな、ゼッド……。
「言っただろ! 今度アミル・ガウルを体に入れたら死ぬんだぞ!! 自分でも分かってるんだろっっ!?」
その場を去ろうとするゼッドの腕を掴み、アミル・ガウルを求めて縋るサラ。
前回は欲しいならくれてやるよとヤケになりかけていたものの、さすがに今回は自分から渡すようなマネはしないだろうと思っていたのですが、結局サラに渡してしまっていましたね。本気で息子を殺してまで、また自分の命も惜しくないと言い切れるほど欲しているのならば、たとえそれで命を失うことが分かっていても失いたくはなくても、望みを叶えてやることが唯一自分にできることだと思わざるを得なかったんだろうなあ……。アミルを手に入れたサラの狂喜じみた浮かれ様は、ホント朝からよくやるわと苦笑い。


「ゼッドのお母さんは生きてるじゃない! 生きている限り諦めないで。どんな形でも一緒に生きることを諦めないでっ」
ロイア出生編のエピソードはロイアの成長を促すためだけで終わりなのだろうか、今後のストーリーに絡んでくることはないのだろうかと思っていたら、ここで活かされてきました。タスク人であることや呪われた子の方ではなくて母親絡みとはね、なるほど。あの出生エピソードがあるのとないのとでは、セリフの重みが全然違ってきますよね。ゼッドとロイアの母では状況が違うので、どんな形でもとは言ってもなあとちょっと引っ掛かりを感じなくもないのですが。


ロイアに説得されサラの元へ戻ろうとしたところに、ゼッドとの決着をつけるため現れたデュケム。
……空気読めデュケム。なんでわざわざ復活させられたのかと思ったら、ゼッドがサラのところに行くのを邪魔するためですか。炎のスペルシャードがぶわっと広がる動きが何かかっこいい。髪の毛もちゃんと焦げているのが細かいなとかくだらないことを思いました。


アミル・ガウルの負荷により倒れるサラ。精神世界の中で必死に手を伸ばしシャードを掴んだサラの目の前に映し出されるのは、在りし日のサラとゼッド。
「なんて暖かい光……。思い出した……、あの時、あの苦しみを癒してくれたのは。私を絶望から救い出してくれたのは。――守りたかった、強くなりたかった。どうして忘れていたんだろう……、私の大切なゼッド」
ゼッドを愛してくれていたのなら、その気持ちを思い出してくれたのなら、直前まで毒盛ったり絞め殺そうとしていようがたとえご都合主義だろうが何だろうが、そんなことはどうでも良くなってしまいました。
「お母さんがゼッドに伝えてほしいって。『私の大切なゼッド、ありがとう』って」
ちょっと待て。サラが目を開けた時にいるのは普通ゼッドだろう。ゼッドであるべきだ。ゼッドでなければならないはずだ。ゼッドが最期を看取ることに何か不都合でもあるのか? 間に合わないことに意味があるというのか? せめて、せめて死に目にぐらい…………。ゼッドには母親の暖かい温もりを知ってほしかった。確かに現実では肉親の臨終間に合わないことだって多いでしょうが、作り話でそんな意地悪はいらないよ……。


人死エピソードには結構涙腺が弱いのですが(直近だとたまたま観た結界師のパティシエの話かな。その前だとクレしんの戦国大合戦あたり? ……新作見てないっぷりが分かる)、たとえ何人死のうとも牙では泣くことなんてないだろうと思っていました。思っていたのに、赤ん坊のゼッドの丸っこい小さな手が出てきた時点でもう駄目だなと。どうせ泣くのなら、ゼッドが救われたことに対する涙だったらどんなに良かったことか……。スタッフのいーじーわーるー、おにーっっ。しかし、残り2話の中で間に合わなかったことがどこかに繋がっていく可能性がもしかするとある……いや、どうかな。


第50話「永遠の絆」
DVD第三章が「永遠の絆」だと知った時にもしかしたらこれが最終回のサブタイなんじゃあとか書いてましたが、デンゲキDSでうっかりこのサブタイだけ先に目にしてしまい、これってたぶん50話のだよね?ってことは全51話だとばかり思っていたけれど実は50話で終わりなのか!?と混乱してました。メルマガで残り○話というのを見て、51話が最終回だと確定したわけですが。
ついにゼッドとノアの関係に決着がつく時が来ました。キービジュアルや第1期OP映像で最初から対立の構図は示されていたので、その時がずっと楽しみでもあり怖くもあった部分です。永遠の絆。マイナスイメージの言葉ではありませんが、この先二人が一緒にいられる可能性の低さが滲んでいるなあと。最悪の展開も覚悟はしているつもりですが、せめて「STAY GOLD」的な感じであってくれるならば……。予告映像の中で散っていた羽は、どちらかが付けている羽飾りのですよね。
カームから抜け出したいと願っていたゼッドが望んで来たはずの異世界で、カームでのたった二つだけの支えだった母親とも親友とも対立しなければならなければならないなんて、皮肉すぎるよなあ。その後にゼッドの手に残るものってなんなんだろう……。